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また職業体験受け入れの申請が通ったよ。
にやにやしながら言う店長に、顔が引きつるのを感じた。
憧れだった花屋に就職できたのは、フィルクレヴァート連合士官学校近くにあるこの店舗が人手不足だったからだ。私は一も二もなく求人に飛びついて、めでたく夢を叶えた。それからしばらくは、順風満帆、仕事は大変だけれど、楽しい日々だった。
問題は、士官学校に貴銃士様方がいらしてからだ。
門外漢の私はよく知らないけれど、彼らはもともと銃である。そして、その情操教育のためなのか、貴銃士たちは「職業体験」を課せられることになった、らしい。うちの花屋も、もともとが人手不足だったのだ。士官学校と近いのもあって、職業体験の貴銃士を受け入れると決まった。
これが、本当に、厄介だった。
貴銃士は揃いも揃って顔立ちが整っている。他はどうだか知らないけれど、ここに来る面々は、性格も社交的だ。
筆頭が、ペンシルヴァニア。
アメリカの猟銃だとかいう彼は、彼のマスターの計らいで、猟に出られない間もできるだけ自然に触れられるようにと、職業体験のノルマはここで消化することになったのだという。
樹皮色の髪に、草原の瞳。穏やかな表情は木漏れ日のよう。
最初は、なるほど猟銃、と思っただけだった。
「名前ってば、照れちゃって。ほんとうに、ペンシルヴァニアさんが好きだよね」
「好きだとか言わないでもらえますか!?」
店長のなまあたたかい言葉に噛みついた。
「好き」なんて、そう簡単に言わないでほしかった。
「確かに! ペンシルヴァニアさんは良いひと? 銃? 貴銃士? ですよ?
顔も良いし人あたりも良いからお客さんが増えますし? 売り上げ計算すると明らかに貢献されてますし?
でも、だから、ですよ!
ペンシルヴァニアさんは間違い無く、老若男女愛されちゃうタイプです! 彼みたいなのを嫌うのは、嫉妬か、ひねくれ者か、感性がズレてるかでしょう! 嫌うまではいかなくてもライバル視とか!
だから嫌なんです! 簡単に好きになっちゃうような相手を、簡単に好きになっちゃうのが私だなんて、私自身が認めたくないんです!
もっと、なんか……、ドラマチックな……、恋とかなんかそういうのは……、もっと……。
と、とにかく! 華々しくあるべきなんですよ!
私はもっと……、もっとロマンチックに……」
「好きなんだねとは言ったけど、恋とまでは言ってないんだけどな。
あと、うしろ見て」
一般人でも口でマシンガンは撃てる。撃ち終わって、肩で息をしながら、店長の示した方を見やった。
そこに、
「嫌われているのかと、思っていたんだが」
「は」
「……たぶん、そうではないん、だな?」
高身長のくせに、なんだか上目遣いに見えてしまいそうなほどに、窺う目つきの、──ペンシルヴァニアさん。
……そんな顔されたら、意地張って突っぱねられないじゃん! そういうところも! そういうところも!