始まり04

 こんのすけと燭台切を連れて鍛刀場から出た後、例の5振りのうちの1振りを選ぶというやつをすることにした。
 燭台切という良い人が1人居るんだ、もう1人が気難しい相手でも心労は減るだろう。先程の部屋に戻る途中で庭に積まれたままの荷物を見た燭台切が、あとで運ぶのを手伝うね、と言ってくれた時なんか感動した。

「この中から選ぶって言ってもさ、情報無しじゃやりようがないんですよね」

 部屋について早々、どこからか5振りの刀を取り出して床に置き、選択を迫ってきたこんのすけに文句をつける。
 成る程と言われるが、事前説明は重要だろうに。
 隣の燭台切だって、そうだね、銘くらい教えてもらわなきゃ、と。分かってる、燭台切はよく分かってる。
 こんのすけは机に乗ると、端から順繰りに、

「加州清光。沖田総司の刀です。扱いにくいですが性能は優れています」
「山姥切国広。国広による山姥切の写しですが、彼の傑作です」
「歌仙兼定。家臣を36人斬り殺したため、名を三十六歌仙から取られています」
「陸奥守吉行。坂本龍馬の刀です。 地元土佐で名刀と評判です」
「蜂須賀虎徹。虎徹の刀には贋作が多いのですが、蜂須賀は数少ない真作です」

 ふうむ、と息をつく。
 聞く限り、性能とやらは皆優れているらしい。
 同じく順番に感想を述べるとして、扱いにくいというのが気になる、写しとはなんだろうか、物騒な由来だな、前にちらっと観たドラマの龍馬好きだったな、贋作とはなんだろうか、以上。
 とりあえず写しと贋作の違いについて燭台切に尋ねると、写しは既存の刀を参考に作られたもの、贋作は本物を騙った所謂偽物、とのこと。
 聞いてみたのはいいものの、今役立つ情報では無いか。
 さて、もしこんのすけの説明が付喪神の性格に反映されているのだとしたら、……扱いにくいのは困る、写しはよくわからないから保留、戦闘ジャンキーっぽい、龍馬の刀らしい、天才キャラっぽい、というところか。

「龍馬だな」

 その心は、といえば、消去法と「すごい人は良い刀を持っている気がする」という個人的な想像の合わせ技である。というのも、学校の優しい先生が龍馬ファンだったのだ。だとすると龍馬は多分良い人だし、良い人が持つ刀は良い付喪神だ。きっとそうだ。そうであって欲しい、私の精神衛生的に。
 私の選択を聞いて、こんのすけが1振りを残してどこかへ刀を消してしまった。
 その1振りを畳の上に置くと、燭台切を喚びだしたときと同じように念じてみる。部屋が光に包まれて、そして。

「わしは陸奥守吉行じゃ。世界を掴むぜよ!」

 当たりを引いた! スタンダップ、続いてガッツポーズする。
 陸奥守は明るい笑顔を浮かべていて、完全に人当たりの良いタイプだ。私のリアクションにも目をぱちぱちさせて、愉快な奴じゃのう、と笑みを浮かべた。
 良かった、本当に良かった。ありがとう、坂本龍馬。ありがとう、先生。

「えっと、私は審神者の名前。よろしく」
「うっはっはー、わしに任せちょけ!」

 自分も自己紹介をして頭を下げる。楽しそうな声が降ってきた。
 お辞儀をやめると燭台切も立ち上がっていて、場所を少し退ける。
 同じように陸奥守と自己紹介をしあって、最後に握手をしていた。コミュ力が無いのは私だけだ、2人はすぐ仲良くなってくれるだろう。

「それでは名前様、本丸内の案内をさせて頂きたいのですが」
「あー、はい。どうも。お願いします」

 完全に蚊帳の外だったこんのすけに声をかけられた。
 そうそう、案内より1振りを選ぶのを優先したのはこのためでもある。説明は一度で終わらせた方が楽だ。
 落ち着いて微笑む燭台切と楽しげにそわそわしている陸奥守に目をやると、行こうか、と爪先を部屋外に向けた。

すぐそばにあるこれから

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