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新たに発見された特異点、オケアノス。
オルレアンやセプテムの広大な緑とも違う果てしない青は、閉鎖的なカルデアとは違いすぎて目が眩みそうなほど。
そのうえ、エウリュアレ、アステリオス、アタランテ、ヘラクレス、メディア、イアソン、ヘクトール、果てはダビデ王。神代の色が濃く、息を呑むほどの神秘性を持つ英霊を次々目にしている。
が、そんなくだらないことを言ってはいられない。
それに、こちらにだって、力ある大英雄が居るのだ。
自らの引き連れて来た褐色の大男をちらりと見る。すっかり主戦力になった彼は、次なる戦いにうずうずしているようだった。
そんな状態でも、視線には気付くらしい。彼の目が私を見た。それはまず私の顔をじろじろ眺め、品定めするように足元まで下っていく。不躾な見方に眉間へ力が入ったものの、ダビデ王の色のある目よりはマシだ。御咎めなしにしてやろう。
ベオウルフに私をすっかり観察させてやると、満足したのか、ぐっと胸を張る。
「マスター」
「何」
「俺はサーヴァントだ」
彼は、私が当主であるのと同じくらい常識的であることを、わざわざ口に出した。半ばあきれて答えると、彼は肩と喉を震わせる。おかしそうに細められた目が遠くに流れた。
遥か前方、敵の気配がある。
赤褐色は爛々と輝いていて、その鏃は一瞬私に向けられた。
「俺を上手く使え。あんたなら出来るだろ、マイマスター?」
「──」
口が開く。すぐにはっとして唇を横に引いた。
──驚いた。ベオウルフは思っていたより、私を高く──言い換えれば、正当な──評価をしている。
彼が私を評する言葉を吐くこと自体よくあったことは確かだが、それにしても。
なんだか、いつもと違う。胸の奥がぞわぞわとくすぐったくて、むず痒い。
そこに巣食うなにかを吐き出すように、勢いよく口にした。
「出来るに決まってる。私は、あなたのマスターだから」
「──」
今度は、ベオウルフが口を開ける番だった。間抜けな顔でぽかんとしている。丸くなった目は、次第に笑みを宿した。
「ハハハ! 最高だな!」
戦闘態勢を整える途中だというのに笑いだしたベオウルフは、過剰に満足そうだった。それは、私の答えが、ただ当たり前のことを口にした以外の意味を持っていたのだと示している。
しかしベオウルフは笑うだけで何も言わず、戦闘に赴くため駆け出した。もう何度も見せられたかもしれない背中が、敵陣へと切り込んでいく。
笑いながら戦うとは器用なやつだ。あれだけ余裕なら、どうせすぐ帰ってくるだろう。はやくこの特異点を修正して、カルデアに連れ帰りたい。そんなに笑った理由を、問い詰めてやらなければ。