027

※夢主設定濃いめ


「────……あ、さ……? ……う、あたま、いった……」
「おはよう、名前。よく眠れたか?」
「…………へ!? え!? がっいあある、──先輩!? ッいてて」
「なんだ、また俺をフルネームで呼ぼうとしたのか? あれ、距離を感じて寂しいんだぜ?」
「エッ、あ、やば、えっと、え? 私、そんな呼び方を、え、きのう?」
「覚えてないのか。せっかく熱い夜を過ごしたっていうのに」
「あつっ、へ!!??」
「昨日の名前は、俺のことを熱弁してくれただろ? いやあ、散々な言われようだったけどな。まさか、あんなに好かれているとは思いもよらなかった」
「ヒョッ、え、えっと、えっと、ご、誤解、誤解じゃないけど、あの!!」
「ハハハ、顔が真っ赤だな」
「そりゃあそうでしょう!!」

 起き抜けのとっちらかった頭で、ガイア先輩との応酬。しかも、私は二日酔いギリギリ手前と来た。起きてすぐ目に入ったのが、エンジェルズシェア近くの宿の一室、声をかけてきたのが憧れのガイア先輩だったもので、強制的に頭を覚醒させられはしたけれど、それでも本調子にはなれない。
 ガイア先輩がからかってくるせい、というのもあるし、そのからかいの内容がヤバすぎる。
 ──私は、いわゆる前世の記憶を持って、このモンドに生まれ落ちた。前世では、ガイア・アルベリヒという男を推していた一介のオタクだったので、下心と、いずれ訪れる龍災のために何かしたい気持ちとで、西風騎士団に入った。ガイア先輩を慕う心は公にしていたので、騎士団に入ったときは友人に祝ってもらったし、騎士団の中でも、私はガイア先輩に懐いている新人だと巷で話題になったぐらいだった。
 そんな私は、昨日とうとう、ガイア先輩とのサシ飲みに誘われた。彼のことだから、多分、私を探るつもりだったんだと思う。
 彼は、人が少ない席に私を案内した。
 私は、いくら酒を入れられようと、言ってはいけないことは言わないようにしよう、と覚悟した。たとえば、カーンルイアについてとか。私が知っていたらおかしいことを言ってしまえば、警戒されてしまう。「話術」で真実を吐かされる可能性すらある。とにかく、私は自分の中にラインを引いた。
 はずだったのだけれど。

「…………昨日、私、何を……」
「言った通り、俺に対する『熱弁』だ」
「……………………終わった……………………」

 朧気にしか残っていない記憶と、ガイア先輩の言葉、様子からするに。
 私は、「『ガイア・アルベリヒ』の限界オタク」をやってしまった、らしい。前もって言わないようにしたとろは言わないでいられたみたいだけれど、それにしたって、これは無い。恥ずかしいし、気まずい。
 元々、私がガイア先輩を慕っているのは、西風騎士団での日常だった。しかしながら、それは、私が彼への気持ちをセーブしたうえでのことなのだ。表に出さないところで、私はガイア先輩の一挙手一投足にきゃあきゃあ黄色い声を上げている。騎士らしからぬ行いにも「さっすが! ガイア・アルベリヒはこうでなくっちゃなあ!」とテンションを爆上げしたり、本当は心を開いていないくせにそう見せない姿には「そういうところ~~~~!! マジでそういうところ厄介なんだよな!! でも好き!!」と地団駄を踏んだりしていた。
 たぶん、それを暴露してしまった。

「昨日は面白かったぜ」
「…………引いてないんですか……」
「なんで引くんだ? ああ、そうそう。宿代は俺が払っておいた」
「ははーん、前金」
「おっ、わかってるじゃないか」

 一人のベッドでごろんごろんしそうだった私は、ガイア先輩の表情で察してしまった。この人、私がガイア先輩の本性を知っているのを良いことに、「騎士団らしからぬ」行為にも巻き込むつもりだ。いや、昨日、飲みに誘ってくれた時点で、そうするかどうか様子を見るつもりだったんだと思うんだけど。
 でも、恐らく、ガイア先輩の予想は「俺に盲目的だから、何をさせても良いだろう」か、「俺に理想を抱いている分、失望させたらうまく扱えなくなるかもしれない。気を遣って利用しよう」だっただろう。
 それが、実際は、「俺が何をしたとしても、『わかってる』から、指示に逆らうようなことはしないだろう」という判断になったに違いない。彼の笑顔から感じる圧がそう語っている。

「これから、よろしく頼むぜ」
「ヒィーン……」
「お前の好きな俺のために、存分に働いてくれよ?」
「ヒィン!! ガイア・アルベリヒこの野郎!! 好きだ!!」
「ハハハ」

 もうだめだこれ。
 私は、頭を抱える他なかった。



230131 約30の嘘