ex03

 今日の任務、カフカさんが一緒で良かった!!

「カフカさーん!! 刃さんに浮気されました!!」 
「そうなの? 刃ちゃんったらいけない子ね」
「おい、名前……」

 彼女に泣きついた後ろから、刃さんが追ってくる。私は知らないふりをして、えーん、とカフカさんにすがった。

「さっきの裂界造物との戦闘で、刃さん、何て言ったと思います?
 『お前が俺の死か』ですって!!」

 これを浮気じゃないとして何が浮気なんですか!!
 ひと気の無いのを良いことに叫んでやると、後ろからの「おい」の声が大きくなった。ちょっと面白い。このまま引っ張るかどうか悩む。と、その一瞬で、カフカさんが私の肩を優しく押しのけた。「私、他に用があるの」見放された。付き合ってらんないらしい。
 カフカさんを見送って、わざとらしく肩を落としながら、刃さんを振り返る。彼は、思っていたよりも所在なさげな様子で佇んでいた。
 仕方無い。大袈裟なそぶりはやめにするか。

「……私、わりと傷ついたんですからねー」
「…………すまない」

 隠した本音を告げれば、刃さんが謝りつつも歩み寄ってくる。私は、今度は刃さんの身体に倒れこんだ。それは、簡単に受け止められる。
 刃さんとカフカさんが敵を一掃したから安全とはいえ、裂界の近くで何をやっているんだという話だけれど、刃さんが警戒を解いているなら大丈夫だろうし、もし敵が出ても刃さんがなんとかしてくれるだろう。甘えてしまおう。二重の意味で。
 刃さんの胸元に頬を寄せる。頭上から意味ありげなうめき声が聞こえた。

「……先ほどのあれは」
「はい、弁解は聞きましょう」
「……癖だ。お前に出会う前は、よく……」
「なるほどー」

 言うだけ言って、一歩、後ろに下がる。こちらを見る刃さんの顔へ、右手を持っていく。戸惑いを含んだ静かな目が、私を見ていた。ぺちん。額めがけて指を弾く。間抜けな音がして、私の非力さがわかるようだった。

「これでチャラです。今後も癖が出てしまっても、それでよし」
「…………これで、だと?」
「はい」

 って言うと、責任感のある刃さんは困っちゃうんだよなあ。わかっていて言ってしまうのだから、私もなかなか悪い奴である。
 気まずそうな刃さんに、私は言ってやる。

「その代わり、本当に死ぬときは、ちゃんと私のところに帰ってくるんですよ」
「それは当然だ」

 間髪入れず返ってきた答えに、私は笑った。なんて健気な人なんだろう。

あとは落ちるだけの微睡みの淵で君を待っている

mjolnir 230803