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 吸血鬼マナー違反ことマナくんは、私と同じソシャゲをやっているらしい。そうと知って、ぜひともとお友達になった。面白いゲームなのに、リアルでは同志を見かけたことがなかったので、この機を逃がすわけにはいかなかったのだ。

「やったー! 勝った!」
「……名前の戦い方、むごくね……?」
「ハイドンオロバスも多様性」

 (つい最近プレイヤー間で人気の出た)道連れ自爆と蘇生を繰り返す戦法に、マナくんは顔を青ざめさせている。吸血鬼マナー違反と名乗る通りのしょっぱい悪事──たま~にやりすぎていると思うが──に興じるマナくんだけれど、これで根っこには常識がある。確かに、元々常識を知らなければ、意図して破ることもできないはずだ。
 でも、勝敗を決めるゲームにおいて、情け容赦なく、優しさを捨てて戦うことは、ルールの範囲内で許されている。マナーを違反しなくても、むしろ違反していないからこそ、よりむごくてえげつない行為も可能なのだ。ふふん。
 涙目でゲーム画面をいじるマナくんに目をやる。パーティー編成を見直しているらしい。

「こんだけボロボロにされてよくめげないね」

 ただいまの記録、私が7勝2敗。この2敗だって、ゲームの乱数ブレゆえの事故みたいなものだ。
 そして、どんなゲームでも、対戦要素がある限り「ガチ勢と初心者がマッチングして、初心者が心を折られる」という出来事は語られるものだ。私もガチ勢とまでは言わないが、マナくんとはそれなりに力量差がある。マナくんが心を折られてもおかしくない。
 だというのに、マナくんは「また対戦しようぜ~、公園集合で!」と連絡をくれるのだ。対戦ではなくストーリー攻略について話すのでも、実際に会わずにメッセージアプリ越しでも、構わないのに。
 マナくんは痛いところを突かれたかのように、もにょもにょと言葉にならない音だけで呻いている。その頬が赤いので、あー、やっぱり、カマをかけた通りで良いらしい。
 マナー違反を名乗るくせに、こっちにずかずか踏み込んでこないのも面白いから、ずっとこうしていたくなる。
 こんな意地悪に捕まって、かわいそうに。



220219 約30の嘘