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十一月の半ばほどにもなると、本丸にも冬が訪れる。 審神者が自由に景観を変更できる景趣システムは、ここでは日本のある地点の天候と連動するよう設定されたいた。そこでは朝から雪が降ったらしい。 本丸の外も、一面真っ白だ。
こどものよろこびそうなけしきだ。そう思考しながら、小豆長光は冷えきった縁側を歩く。
しかし、彼の考えとは真腹に、本丸の庭で自由に遊ぶ子供などは存在しなかった。子供のような体駆と無邪気さを持ち合わせる刀剣男士こそ居るけれど、かつて厳格な主の元に長くついていた結果、雪景色への興味を失っていた。唯一彼らが我先にと雪の中へ飛び込んでいくのは、極寒の中での戦闘を想定した実践訓練を行うときぐらいだ。
小豆も、そのことは承知している。この本丸の主が今の主に変わってすぐ鍛刀された小豆は、己と彼らの違いをよく知っていた。 そして、主の孤独も。
「あるじ、はいるよ。 きゅうけいしよう」
整室の飾り障子を片手で開けて、小豆はその中に足を踏み入れる。その様子を、小さな頭が見上げていた。 よはど真剣に仕事に励んでいたのだろう。審神者の表情は、普段からの変化の無さを更に極めている。 幼子らしからの諦念に似た色を宿した大きな瞳は、小豆の全体像を捉えたあと、ふとその片手──にある盆の上へ視線を留まらせた。
「おやつはやつどき。いまはすいーつじゃなくて、これをもってきたんだ」
小豆は審神者にゆっくり歩み寄って、そのかたわらに膝をつく。 片手にしていたものを両手で差し出して、無の裏から興味を覗かせ始めた彼女の目に、よく見えるようにした。
「雪うさぎだ。 かわいらしいだろう?」
「雪うさぎ……」
初めて聞く言葉、という風に、審神者は小豆の言葉を繰り返す。事実、そうであったのだ。当然、見るのも初めてて、審神者はそれを注置深く観察した。 饅頭型に固められた白い雪の塊が、大小二つ。それぞれに赤い南天の実と緑の葉が一対ずつ埋め込まれていて、なるほど、まきしくうさぎそのものの姿であった。審神者はとうとう目を輝かせて、それをじっと見つめる。思った通りの反応を得て、小豆は微笑した。
「こちらのおおきいのが、わたし。 ちいさいほうが、あるじだ」
跳ね上がるような勢いで、審神者は小豆を見上げる。 彼の優しい視線と目がかち合って、身体を固まらせた。こんな目を向けられるのにも、こんな気持ちになるのにも、未だ慣れていない。 でも、嫌ではない。 嫌ではないのを、どう表したら良いのかわからない。
審神者は凌巡してから、そっと雪うさぎに手を伸ばした。壊れ物を触るかのように恐る恐るとした仕草で、小さな雪うさぎを押す。 それは、大きな雪うさざにぴったりとくっついた。 まるで寄り添っような姿に、小豆も目を瞬かせる。
やがて彼は破顔して、うさぎのように縮こまる審神者の頭を撫でてやった。