擬似宝探し
「……イルマ君の位階昇級と共に実体化した、謎の存在アリさん。なるほどね」
「う、疑わない、んですか?」
「契約書に書いてあったでしょ。話せないことは話さなくてもいいけれど、嘘はつけないって。実際、目の前に居るし」
「指輪本体と指輪のキョードーショユーシャに危害加えない・加える輩には敵対する、ってのもネ! 俺ちゃんもひとまず安心ってカンジ?」
貴重な資料として実験されたら恐ろしいもの! と「アリさん」がおどける。曰く、おかしな研究者だのに引き渡されたりしたくないとのこと。それは当然だろう。名前も頷く。
「話題性を求めてたかってくる奴なんかもね。あいつらは器物破損という概念を持たない」
「ワーオ、スッゴイ殺気!」
みしみしと拳を握る名前に、入間は笑みを引き攣らせ、アリさんはわざとらしげに怖がってみせる。
咳払いをひとつ。それで切り替えた名前は、アリさんに向き直った。
「……で、もう一度確認するんだけど。実体化する前の記憶は無い?」
「悪食の指輪として歴史を見てきてないかってやつ? 俺っちから言えるコトはなんにもないわね~」
「そう……」
名前は額に手をあてて俯いた。その表情はひどく惜しそうで、何も悪いことをしていない入間すらそわそわしてしまう。アリさんはひゅるひゅると部屋を飛び回り、茶化すようにするばかりだ。
「アリさんが悪食の指輪に宿る存在なら、魔界の古い歴史を体感してきたんじゃないか」。アリさんの存在を知った名前が特に興味を示したのはそれだったのだが。
心配そうに見守る入間の前、名前はわかりやすく落ち込む。
そうして、ばっと顔を上げた。
「じゃあとりあえず、悪食の指輪に意思あるいはそれに類する存在が宿った件を調べてみよう。少なくとも私が記録・記憶している中にはないけれど、他の魔具、古い道具ではどうなのかからアプローチしてみてもいい。魔具に意志が宿るメカニズムと、アリさん様が意識を持たなかったとしてももっと早い段階から宿っていた可能性も探ってみるのもいい。もしかしたら睡眠学習的な理屈で、深層意識に古い記憶があるかもしれない。それから」
「メチャクチャ喋るジャン」
その目はギラギラ輝いている。最早入間とアリさんに聞かせようとしているのかどうかすらも怪しい様子で、ずらずらと喋り続けていた。
──そっか。このひと、悪魔だった。欲に忠実な、悪魔。
入間は今更、そのようなことを思うのだった。